こんにちは。先日上場インフラファンドの魅力について記事を書きました。
(参考記事)インフラファンドのお勉強|インフラファンドって何?
インフラファンドが今注目すべき魅力的な投資対象であることを紹介しましたが、そうはいってもインフラファンドにはリスクや懸念点があります。
今日はインフラファンドのリスクの側面について述べていこうと思います。
※長文です。時間がない方は太字のところだけ読んでいただければと思います。
前提|インフラファンド=太陽光発電投資です。
2024年現在、インフラファンド=太陽光発電投資です。(風力発電もありますが、割合が非常に小さいので無視します)
ここではインフラファンド(太陽光発電)の自然リスク、金融リスク、運営上のリスク、制度上のリスクに分けて説明したいと思います。
インフラファンドの自然リスク
天候不良による発電量低下リスク
太陽光発電というと真っ先に思いつくのがこれだと思います。
太陽光発電は自然を相手にした発電方法なので、当然日照量が少ないと発電量が少なくなります。
どのインフラファンドもある程度現実的な予想を立てて発電量を予想していますが、100%の精度は難しいようです。発電量が予想以下の場合は、売電収入が思ったように得られず売り上げが減少します。
自然災害によるリスク
日本は災害大国です。
地震や台風などの自然災害によって、インフラファンドが投資している発電施設が損害を受けるリスクがあります。直近では2024年1月1日の能登半島地震によって、ジャパンインフラファンドの持つ太陽光発電所の稼働が停止しました。
(参考記事)石川県能登地方を震源とする地震による運用資産への影響に関するお知らせ(続報)
自然災害により、インフラファンドの資産価値が減少したり、発電量が減少する可能性があります。
インフラファンドの金融リスク
金利変動リスク
あまりピンとこないかもしれませんが、インフラファンドは銀行からの借入や社債の発行などで資金調達を行っています。
借入を行っている以上、金利が上昇すると、借入コスト(返済額)が増加し、収益性が低下する可能性があります。
固定金利の場合は大丈夫ですが、変動金利の場合はモロに影響を受けます。インフラファンドの借り入れの金利の状況(固定:変動比率)はチェックしましょう。
市場の相関性のリスク
インフラファンドのリターンや資産価値は伝統的な資産(株式、債券)との相関性が低いとされていますが、上場インフラファンドは東京証券取引所に上場している以上、株式相場と多少相関性があります。
株価が暴落した際などはインフラファンドも売られ、市場価格が低下する可能性があります。まあ、とはいっても価格変動率はマイルドなので、過度に心配することはないと思います。
インフラファンドの運営上のリスク
ケーブル等の盗難被害
インフラファンドはほぼ無人で管理されているため、ケーブルなどの設備の盗難が発生することがあります。たとえばカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人(9284)では2024年1月30日に盗難被害のプレスリリースを出しています。
(参考記事)運用資産における電気ケーブルの盗難被害等に関するお知らせ
盗難の被害があると、当然収益に悪影響が及びます。
出力制御
再生可能エネルギー発電施設では電力の供給過剰が発生した場合に出力制御が行われることがあります。出力制御はインフラファンド独特の概念なのでちょっと理解しずらいですが、一言で言うと電力会社による電力買取ストップです。
出力制御が行われると、予定通りの売電ができなくなり売上が減少します。しかも、かなり影響が大きいです。
出力制御自体は多くの地域で制度化されていますが、特に九州電力管内で多発しています。インフラファンドのIR資料には必ず地域別の発電割合が示されているので、地域別の発電比率(特に九州電力管内の割合がどれくらいか)はチェックしましょう。
もっとも出力制御の問題は国も問題視しています。徐々に問題は緩和していくのでは、と期待しています。
インフラファンドの制度上のリスク
FITからFIPへの移行による売電価格の低下
現在、インフラファンドはFITという固定価格買取制度によって売電価格が安定を実現していますが、段階的にFIP(フィードインプレミアム制度)になっていくことが予想されています。
ここではFIPの詳しい説明は省きますが、FIPになると変動価格での買取になるため、事実上の売電価格引き下げが起き利益率が低下するリスクがあります。
撤去費用の積立や設備投資の負担などのリスク
インフラファンドは比較的新しい制度です。そのため、今後の制度変更によって影響を受ける可能性は非常に高いです。
たとえば、太陽光パネルの撤去について現時点で定めはありませんが、今後、撤去費用の積立が議論されることが予想されます。
また、設置基準の見直しによって、既設の発電施設に追加のコスト負担が必要になる可能性もあります。いずれにしても制度変更によって、収益性に影響を与える可能性があります。
導管性要件|非課税は上場後20年間の時限措置
インフラファンドは税の優遇措置を受けていますが、現時点ではあくまで20年間の時限措置です。(これを導管性といいます)
「導管性」を理解するためにはJ-REITと比較して考えた方がわかりやすいので、J-REITの例を出して説明します。
J-REITでは収益の90%以上を投資主に分配することで法人税を非課税とする取扱いが恒久的に認められいます(ペイスルー課税)。これによって二重課税を回避しています。
上場インフラファンドにおいても一定の条件のもとで同様の税務上の取扱いが認められているのですが、先ほども述べた通り、上場後約20年限定の時限措置になっています。
では20年経過後はどうなるかというと、上場インフラファンドが導管性要件を満たさないと判断され、インフラファンドの税負担額が増大し、分配金の大幅な低下が予想されます。また、上場のメリットも薄くなるため、上場廃止になる可能性も考えられます。
この問題はインフラファンドにとって非常に大きな問題で、インフラファンドの将来が見通せない大きな要因となっています。
(「導管性」が原因で機関投資家がインフラファンドになかなか投資できないとも言われています)
まあインフラファンドの上場は2016年からなので、「導管性」が本当に問題になるのは2036年以降です。喫緊の問題ではないとはいえ、早く法改正して投資主を安心させてほしいところです。
おわりに
以上、インフラファンドのリスクについてでした。インフラファンドのリスクの話はなかなかシビアな話が多いので、真剣に考えれば考えるほど「やっぱり投資するのやめようかな」となってしまうかと思います。
一方で、そういったファンダメンタルズであるためにインフラファンドが長年割安で放置されている、とも言えると思います。
問題は山積していますが、今後さらに悪材料が出るというよりは問題解消に向かって動くのではないでしょうか。そういう意味ではインフラファンドに投資妙味はあるのかなと思っています。
今日は以上です。最後までお読みいただき、ありがとうございました。