こんにちは!先日この本を読みました。
「『予想』のいらない株式投資法」
[wpap service="with" type="detail" id="B08PYYG2WN" title="機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法"]
日本生命、フィデリティ投信などで運用の仕事をしてきた元・機関投資家の著者が「どのような投資アプローチで投資してきたのか」を綴った一冊です。
個人的には非常に面白かったです。今日は簡単に本の内容を紹介していきたいと思います。
株式投資で初心者がつまずく「3つのハードル」
まず本書の位置付けから説明します。
本書の目標は「株式投資でプロ投資家と同じような投資判断ができるようになる」ことです。
当然ながらアマチュア投資家がプロ投資家になるのは容易ではありません。
本書では初心者が株式投資につまづくポイントとして、主に3つ挙げています。
- 数多くある上場銘柄から「これぞ!」という銘柄を絞り込めない(スクリーニングの問題)
- 興味のある銘柄がよい会社か悪い会社かはんだんできない(決算・財務指標分析の問題)
- 投資したい銘柄をいくらで買っていくらで売ればいいのかわからない(バリュエーションの問題)
本書ではこの3つのハードルを中心に「機関投資家がどのように考え判断しているのか」を教えてくれます。
3つのハードルについての詳しい説明は本書を読んでいただくとして、本記事では個人的に印象に残った点を紹介したいと思います。
成功する投資家が教えてくれたヒント
筆者は仕事柄、成功する投資家を数多く見てきたそうですが、投資に成功するための投資手法については誰に聞いても教えてくれなかったそうです。(そりゃそうだ)
しかしながら、投資に成功する「ヒント」については教えてもらったそうで、そのヒントとは大きく3つだそうです。
- 会社の事業を理解しなさい
- 会社の歴史を知りなさい
- ROEを意識しなさい
一見すると???のアドバイスばかりです。
まったく実用的ではなさそうですが、これらは実は重要な意味をもちます。1つずつ解説していこうと思います。
会社の事業を理解する=利益の出方まで理解する
株価が何倍にも上昇する株はどのような変化があって株価が上昇するのでしょうか?
一般的に考えれば「業績が向上した」ことが原因ですが、この本ではさらに踏み込んで「利益の出方が重要」と述べています。
- 利益はどこから来るのか
- 企業はどのようにして稼いでいるのか
- 今後利益を伸ばそうとするならどのデータや指標に注目すべきなのか
利益の出方を分析することで今後の拡張性もある程度予想することができます。
個人投資家でここまで分析するにはなかなかハードルがありますが、
業績や利益からさらに踏み込んで、「利益の源泉に迫る」という点は「さすが機関投資家」と思いました。
会社の歴史を知る=将来予測ではなく過去の分析を行う
株式投資とは当然未来の株価(≒業績)を予想する必要があります。
しかし、マクロ経済や市場環境は刻々と変化していきます。そのような変化を前提とすると未来を予測するのは困難を極めます。
ところが、過去の業績や財務内容の分析は「過去」の分析なので変化することはありません。
時間を費やした分だけ理解が深まります。
また、過去の実績がしっかりしている優等生企業ほど将来もよい結果を残す可能性が高いです。
そのような意味で過去をしっかり分析することを推奨しておりました。
たとえば決算書は数年ではなく最低10年分くらい読み込んだほうがよいそうです。
もちろん、過去の業績が反映されて今の株価が形成されています。
とすると過去の分析ばかりしていても今後の投資への関連は薄いように思いますが、バリュエーションを頭に入れたうえでいいタイミングで投資できれば妙味のある投資になるようです。
タイミングを逃さずに投資するためには自分が買いたい株価をあらかじめ決めておくことが重要とのことでした。
ROEを意識する=ROEが高ければ複利効果も高くなる
ROEは難しい話が多くて私自身まだまだ完全な理解には程遠いのですが、面白いなと思った話を紹介します。
著者はアナリストとして働いていたとき、海外の投資家からよく次の質問をされたそうです・
「3年で2倍になる銘柄を教えてよ」
(それがわかれば苦労しないでしょ)と著者は心の中で何度も思ったそうですが、この言葉の裏にはROEがありました。
というのもROEは通常以下で計算されます。
ROE=当期純利益÷株主資本
これを分解すると以下になります。
ROE=売上高純利益率(当期純利益/売上高)×総資産回転率(売上高/総資産)×財務レバレッジ(総資産/株主資本)
売上高や当期純利益はアナリストの分析範囲内である程度予想可能です。
一方で、総資産回転率についてはアナリスト予想より企業側の方針が関係します。株主資本も同様です。
そのため、アナリストがROEを分析することには限界があります。
しかし、それでもなおアナリストにROEを質問するのには意図がありました。
なぜなら仮にROEが毎年25%を達成している場合*、3年で株主資本はどうなるかというと
*配当がない場合
1.25×1.25×1.25=1.95
株主資本は約2倍になるからです。
株価は株主資本とかなり連動するため、ROEの高い企業に投資できればそれだけ複利効果も大きく得ることができるのです。
余談ですが、日本株はROEが低く米国株と2倍以上ひらきがあるそうです。
その理由として、米国株は財務レバレッジを効かせていること、純利益率が高いことが要因として挙げられていました。
おわりに
以上、「機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法でした。
ブログで紹介したのは著書のごくごく一部でして、これ以外にも10倍株の発生メカニズムの話や株主資本複利の話など、勉強になる話が盛り沢山でした。
正直、個人投資家で株式投資がうまくなりたい方にとっては必読級の1冊だと思います。
今日は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。