第169回芥川賞受賞作。
あらすじはこんな感じです。
井沢釈華の背骨は右肺を押しつぶす形で極度に湾曲し、歩道に靴底を引きずって歩くことをしなくなって、もうすぐ30年になる。両親が終の棲家として遺したグループホームの、十畳ほどの部屋から釈華は、某有名私大の通信課程に通い、しがないコタツ記事を書いては収入の全額を寄付し、18禁TL小説をサイトに投稿し、零細アカウントで「生まれ変わったら高級娼婦になりたい」とつぶやく。ところがある日、グループホームのヘルパー・田中に、Twitterのアカウントを知られていることが発覚し——。
病気で身体が自由に動かない女性が主人公というなかなか物珍しい小説です。
本書を通して、いわゆる障害者がどんな生き方をしているのかみたいのが少しわかった気がします。
(とはいえ主人公の病気は非常に特殊ですが)
個人的に面白かったのが、ネット空間とリアルの乖離です。
たとえば昨今インターネットの普及でネット空間になんでも揃っているし欲望もネット内ですべて得られるように思えてきます。主人公も18禁小説を都横行してお小遣いを得ています。しかしながら、健常な身体というリアル世界とのインターフェースがないとネット世界もなんだか空虚です。
対照的に、リアルの世界はとげとげしくて決して思い通りにはなりませんが、たとえ健常な身体がなくても充実した世界として描かれます。
リアル世界って軽視してしまいがちですが、リアル世界をいままで大切にしようと思いました。
なんだか夏休みの読書感想文みたいになりましたが、個人的にはかなりオススメです。
今日は以上です。