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【感涙】ホテルローヤルを観た感想【ネタバレ有】

こんにちは。

コロナ禍ですが、久しぶりにリアル映画館に映画を観にいきました。

ホテルローヤル

アダルトでエロチックで大人びた文学的作品です。
観る人を選ぶというか多分僕が観た映画史上もっとも大人向けの作品だと思います。

しかし、この映画素晴らしかったです。

特に終盤は心が震えるというか涙が出てしまうくらい感動する映画でした。

今日は「ホテルローヤル」の感想を語っていきたいと思います。

(以下、ネタバレを含みますのでご了承ください)

 

ラブホの娘。

主人公は札幌で美大受験に失敗した十代の少女、雅代です。

雅代の両親は釧路でラブホテルを営んでいます。雅代は学生時代に「ラブホの娘」として冷やかされた経験があり、雅代の両親はもともと不倫で結ばれた恋であるという出自もあってか、アダルトなものに嫌悪感をもっています。

 

札幌の美大を受験したのはおそらく両親の元から離れたいという気持ちからでしょう。男の僕でもこんな環境逃げ出したいです。

しかし、雅代の思惑は外れ受験は失敗。暗澹(あんたん)たる気持ちで釧路に戻ってきます。

両親は娘に対して愛はあるものの、配慮に欠けた言動で雅代を傷つけます。

母は

「どうせ記念受験みたいなものですから」

と雅代に聞こえるように他人に話し雅代のプライドを傷つけ、

父は

「お前(雅代)にはここ(ホテルローヤル)があるから」

と娘の気持ちを知らずあまりにデリカシーのない言葉を投げつけます。

 

さらに悪いことに母親が取引先の若旦那と不倫関係にあることを知ります。
(のちに母親は蒸発し雅代がホテル経営をすることになります)

多感な十代の雅代にとっては最悪の環境です。僕でもグレると思いますw

そんな雅代ですが、自分の運命を受け入れラブホテルの仕事を手伝い始めます。いろいろな経験を通して少しずつ成長していくのでした。

 

ホステスに向いている女性とは

この映画の重要なポイントとして、ホテルローヤルで起きた心中事件があります。

本筋と離れてしまうのですが、この事件抜きでこの映画を語るのは難しいので簡単に説明したいと思います。

この事件は両親の蒸発で居場所がない10代の女子高生と、同じく妻の不倫で居場所がない担任教師がホテルローヤルで心中したという事件です。雅代はこの女子高生と声を交わす機会があったこと、自分よりも年下の女性が死んでしまったことにショックを受けます。

ここで伏線となるのは女子高生が「ホステスに向いている女性(=大人の女性)とはどういう女性か」と担任に尋ねたシーンです。

担任は女子高生が子どもでホステスに向いていないと言い切ります。そして、ホステスに向いている女性の3要件を挙げました。

  • ひたむきであること
  • したたかであること
  • 嘘をつくときに自分を納得させる理由を作れること

これは担任の不倫妻を念頭に置いた発言です。不倫妻は間男を結婚の仲人にするという大胆さ、したたかさを兼ね備えています。

しかし、担任が語ったこの3要件がのちに伏線となって回収されます。

 

周囲の変化と雅代の成長

雅代は嫌々ながらラブホテルの仕事をはじめますが、根が真面目なところも幸いして周囲の人間とのかかわりや環境変化を通じて少しずつ成長していきます。

成長の一片はパートのおばちゃんとの関係です。
ラブホテルで昔から働く2人のおばちゃんと雅代は同じ地下室で休憩時間を過ごします。

おばちゃんらはホテルの一室から漏れる声を盗み聞きすることを小さな楽しみとしています。
十代の雅代なら最も嫌いそうな趣味ですが、雅代は拒絶することなく、次第に自分もその趣味を楽しみはじめます。

もう一片で見えるのはアダルトグッズ営業の宮川との関係です。

雅代は宮川に密かな恋心を抱いていますが、以前の雅代は引っ込み思案で宮川のアダルトグッズの営業トークを聞かないようにして部屋に引っ込んでいました。しかし、成長した雅代は宮川のアダルトグッズの営業を嫌がることなく聞くようになります。

環境面での変化としては、母親が蒸発し、さらに父が病に倒れてしまいます。看病が必要になり、一方でホテル経営を完全に自分一人で行わなくてはならないという重責を担うことになります。

このような周囲とのかかわりや環境変化を通して、雅代は「十代の少女」から「ひとりの大人の女性」へと成長していくのです。

 

大人になった雅代と両親との邂逅

心中事件のあとは客数が激減し経営状態が厳しくなります。そして程なくしてしてラブホテルは閉店します。

ラブホテルを引き払う最後の日、アダルトグッズの返品のために宮川が訪れるシーンがあります。

雅代はかつて心中事件が起きた一室に宮川を呼び、宮川に自分がここにいた意味を確認するためにセックスして欲しいと頼みます。

優しい宮川は一度は雅代の願いを聞き入れ、セックスを試みます。
しかし既婚者の宮川は妻の顔を思い出し結局一線を超えることはできませんでした。

雅代は残念がるかと思いきや、自分の予想通りだったとほくそ笑みます。宮川は嫁一筋で、自分とは結局セックスできないだろうことを雅代はわかっていました。そのうえで、あえて宮川を誘惑したのです。

ここは最高に甘美で大人なシーンです。

雅代が宮川を誘うなんて以前の雅代なら考えられませんでした。そもそも十代の雅代は自分の気持ちを他人に雄弁に語れるような性格ではありません。

しかし、雅代は自分の気持ちを伝えなおかつ男性を誘うという、誰が見ても「大人の女性」の振る舞いをするにのです。
ここでかつて担任が言ったホステス(=大人の女性)の3要件の伏線が回収されています。

  • ひたむきであること
  • したたかであること
  • 嘘をつくときに自分を納得させる理由を作れること

この3要件はまさに今の雅代にぴったり当てはまります。

純粋でラブホテルが嫌いだった十代の雅代は、ラブホテル経営者として酸いも甘いも知った「大人の女性」へと成長したのでした。

そしてラストシーンです。

ラブホテルと別れを告げた雅代は創業当時の両親の写真やいまやシャッター街となった両親の住んでいた街に思いを馳せます。そうするうちに両親には両親の生き方があり、事情があり、夢があったことを悟ります。

そう、雅代がかつて汚らしいと嫌っていたラブホテルも実は両親の甘酸っぱい思い出が詰まった大切な場所だったのですね。

雅代は新天地に飛び立ちます。美大の夢も、ラブホテルも釧路からも別れを告げます。

そうして大人になった雅代はいままで嫌悪していた両親と心の中で和解するのでした。

 

粒ぞろいの役者たちに注目

最後になりますが、この作品は役者の演技が素晴らしいです。

まず雅代を演じた波瑠
「雅代役は波瑠だからこそ成立した」と言っても過言ではないでしょう。外見のクールさとは裏腹に内面の成長をひけらかすことなく表現し観る人を感動させます。

そして、心中した教師役と生徒役の岡山天音伊藤沙莉。この2人の掛け合いは見事というほかなく、複雑で危うい関係性をたった数分で成立させています。

また雅代の父親役の安田顕も汚らしい父親役が素晴らしいです。
デリカシーのなさ、人の良さ、不器用さがうまく表現されていてこの映画の脇を締めています。

 

おわりに

以上、ホテルローヤルの感想でした。

序盤のエロチックなシーンからは想像できないほど文学的な映画で、雅代という1人の少女が大人になっていく様を実感させられます。

繰り返しになりますが、正直に言ってこの作品は観る人を選びます。観た人全員が満足・面白かったという映画にはならないでしょう。

というのも細部まで完璧かというとそうではなく粗探しできてしまうところもあります。

たとえば友近が昭和の母役をやっているシーンなんかは笑いを堪えるのに必死でした。
他にも担任がトイレで吐くシーン、便器のなかが見えるように天井から撮られていて、それは見たくなかったと思いました。

しかし、響く人には鐘のように響く映画です。

僕は後半になって雅代の成長を感じてからはずっと鳥肌が立ちっぱなしでした。

映画が映画なだけに初デートで観に行くのはオススメできませんが、熟年夫婦が久しぶりのデートで観に行く作品としてはこれ以上ない至高の作品だと思います。

今日は以上です。

  • 作品名:ホテルローヤル
  • 上映時間:104分
  • おすすめ度:★★★★☆(4.5)
  • 一口メモ:地味ながら秀作。琴線に触れるかも。大人向け。

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