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【天才と破滅】「オッペンハイマー」を鑑賞した感想【ネタバレあり】

    先日、映画「オッペンハイマー」を観ました。

    2024年アカデミー賞受賞作です。2時間58分という長編映画でしたが、さすがアカデミー賞受賞作だけあって非常に考えさせられる作品でした。本日は、この映画について語っていきたいと思います。

    以下、ネタバレを含みますのでネタバレNGの方はブラウザバックしてください。

     

    覚悟はいいですか。ではいきましょう。

    なお、私はオッペンハイマーの史実について触れるつもりはありません。あくまでも映画の感想という点、ご承知おきください。

     

    リーダーとは周りが決めるもの

    映画の進行に沿って解説していきます。

    まず映画の前半では、オッペンハイマーが核兵器の秘密開発計画(マンハッタン計画)の責任者となるまでが描かれています。この部分を見ていて感じたのは、「オッペンハイマー自身がマンハッタン計画の責任者になりたくてなったわけではない」ということです。

    そもそも彼には女性問題や共産主義者との間接的なつながりといった問題があり、米国政府から見ても必ずしも「責任者に最適な人物」とは言えませんでした。しかし、彼が量子力学に精通していたことや周囲の状況によって結果的に彼が選ばれることになります。

    マンハッタン計画は核兵器を作る計画なので決して手放しで参加できる計画ではありませんが、オッペンハイマーがこの計画に参加を決めた背景として、「理論物理学の現実化への純粋な興味」と「ナチスへの脅威」(オッペンハイマーはユダヤ人)という2つの側面が描かれます。

    結局、大人になると「自分がやりたいことだけをする」というのは夢物語です。もちろん自分一人で完結できることもありますが、規模が大きくなってくるとそういうわけにはいきません。
    現実では「誰かの役に立つ」「やらなければならない事情がある」という前提があってはじめて、自分のやりたいことに多少関われるのだろうと思いました。

     

    目標を決め突き進む楽しさ—文化祭のような日々

    映画の中盤、マンハッタン計画に参加し、ロスアラモスという不毛の砂漠で極秘の研究が始まります。

    ロスアラモスでは、緊急で街が作られ、学校や教会が建設されるなど、計画に向けて多大な投資が行われます。そして研究は予期せぬトラブルが起こりつつも、オッペンハイマーは責任者として無難にこなし何度も実験を重ねた末、ついに核兵器が完成します。

    実際に核実験が成功したとき、長年の努力が報われたかのように、研究者たちは大きな喜びを分かち合います。

    この場面を見て、完成したものが何であれ「努力して何かを作り上げること」の喜びは普遍的なのだと感じました。この過程は、どこか学園祭の出し物を作っているような感覚にも似ているなと思いました。

     

    核兵器使用後の苦悩

    映画の後半です。

    オッペンハイマーが作り上げた核兵器は、広島・長崎で使用されました。しかし、その悲惨な結果を目の当たりにしてオッペンハイマーは大きな苦悩を抱えます。その様子は、タイム誌の表紙に「英雄」として取り上げられ、トルーマン大統領との面会シーンにも現れています。

    国を救った「英雄」とされたオッペンハイマーですが、彼自身はその称号を素直に受け入れることができませんでした。以降、核兵器の制限を訴える活動や水爆開発への反対を表明するなど、兵器開発に対して慎重な姿勢をとるようになります。

    その結果、彼自身の過去の行いと対峙することになり、苦難の道を歩むことになるのです。彼のこうした一貫性のない態度は、彼の人生にも影を落とします。

    最終盤では、人生の晩年において、彼がスピーチする場面が描かれます。当時の敵や意見を異にした仲間からも励まされますが、これはかつてアインシュタインが彼に予言したように、「彼らがオッペンハイマーを励まし慰めているのではなく、彼らが自分自身を肯定するために慰めているのだ」というニュアンスで表現されています。

    そう。苦悩していたのはオッペンハイマーだけではなかったのです。マンハッタン計画に参加していたそれぞれが、自らの過去と向き合い後悔や葛藤を抱えていたのです。
    過去の「栄光」とはとても言えない重い十字架を背負いながら、それぞれが人生の終盤戦を歩んでいる姿が印象的でした。

     

    緊張感のある音響と映像美

    この映画の特筆すべき点の一つは、緊張感を高める音響と映像の演出です。音量が極端に大きいわけではないにもかかわらず静かに胸を締めつけるような音楽が流れ、観客をドキドキさせる効果を生んでいます。

    さらに、人間関係はかなり複雑に描かれていますが、丁寧な演出のおかげで理解しやすくなっています。そのおかげもあって長編映画にもかかわらず、飽きることなく最後まで集中して見ることができました。

     

    日本人に配慮された作品

    もう一つ印象的だったのは、この映画が非常に日本に配慮された作品だということです。

    ソ連やナチスについては明確な敵意が示され、同情の余地がほとんど描かれていません。しかし、日本に関しては、核兵器の使用について「本当に必要だったのか」と問いかける描写がされています。また、京都が爆撃対象から外された経緯や、原爆後遺症で苦しみながら亡くなった人々についても触れられており、非常に慎重に作られていると感じました。

    こうした描写を見ると、現在の日本が平和国家として歩んできた歴史が、一定程度ハリウッドでも評価されているのではないかと思います。
    (もちろん日本人として原爆投下は到底許容できるものではありませんが)

     

    最後に

    以上、オッペンハイマーでした。

    この映画で私が最も強く感じたのは、「大きな目標に挑むことの意義」と「その結果を引き受ける覚悟」の大切さです。

    思い返してみると、「大きな目標に向かって全力で取り組む経験」というのは、人生においてかけがえのないものだと思います。映画の中で、核兵器の開発を目指して奔走する科学者たちの姿には、まるで学生時代の学園祭を思わせるエネルギーがありました。全員が力を合わせ、一つの目標に向かって突き進む姿は、観ている側にも熱意が伝わってきて、深く感じるものがあります。

    ただし、この映画はそれだけではありません。「目標を達成した先に待つもの」についても深く考えさせられます。オッペンハイマーは核兵器の開発という大きな目標を成し遂げましたが、その結果生じた苦悩は非常に重いものでした。成果を上げたからこそ直面する責任、そして悲惨な現実という重圧に押しつぶされそうになる彼の姿には目標の選択やその方向性の重要性を強く示しているような気がします。

    人生の中盤戦をどう生きるか

    私自身、これまでどちらかといえば「楽な道」を選んできたところがあります。目の前の困難な道を避けて達成可能な現実的な道を選択して生きてきました。その結果、いつしか「挑戦すること」自体から距離を置いてしまっていたのかもしれません。

    しかし、この映画を観て、「人生の中盤戦」と呼べる今だからこそ、一つの大きな目標に向かって努力することの重要性を考えさせられました。成否はともかくとして、挑戦の過程で得られる経験や学びは、きっと人生を豊かにしてくれるでしょう。ただし、映画が教えてくれたように、目指すべき目標の方向性を誤ると、その先に待つのはオッペンハイマーが抱えたような苦悩かもしれません。

    一度きりの人生です。引き返すことはできません。だからこそ、自分の選ぶ道が間違っていないのか、何度も自問自答しながら歩む必要があるのだと思います。

    以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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