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読書記録 人生

Phantomを読んだ感想【ネタバレ有】

    先日この本を読みました。

    羽田圭介|Phantom

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    あらすじはこんな感じです。

    外資系食料品メーカーの事務職として働く元地下アイドルの華美は、生活費を切り詰め株に投資することで、給与収入と同じ配当を生む分身(システム)の構築を目論んでいる。恋人の直幸は「使わないお金は死んでいる」と華美を笑うが、とある人物率いるオンラインコミュニティ活動にのめり込んでゆく。そのアップデートされた物々交換の世界は、マネーゲームに明け暮れる現代の金融システムを乗り越えゆくのだ、と。やがて会員たちと集団生活を始めた直幸を取り戻すべく、華美は《分身》の力を使おうとするのだが……。金に近づけば、死に近づく。
    高度に発達した資本主義、その欠陥を衝くように生まれる新たな幻影。羽田圭介の新たな代表作。

     

    米国株投資でFIREを目指す事務職の華美とオンラインサロンに傾倒する直幸の物語です。

    まず題材が非常に面白いですね。僕は投資家なので華美寄りの人間ですが、面白くて一気に読んでしまいました。

    今日は投資家寄りの目線から、Phantomを読んだ感想を語っていきたいと思います。

    (以下ネタバレ含みます。)

     

    将来のFIREのために節約する華美

    主人公の華美は年収250万円の事務職員でFIREを夢見て米国株投資と節約に勤しみます。

    節約自体は誰かに非難されるようなものではありませんが、節約癖のせいで結果として最悪な行動をとってしまうことも。

    たとえば友人の結婚式を出張と断ったにもかかわらず(本当はお金が惜しかった)、当日遊んでいることをSNSに投稿してしまい、友人との縁が切れてしまいます。

    他にも遠方に新幹線ではなく夜行バスに乗った結果、腰を痛めて健康を失っています。このように節約自体弊害があるものとして描かれます。

    そういう節約志向の華美とは対照的なのが直幸です。

    直幸はお金に無頓着でいい乗用車や高級品を買い、中古商品や代替商品を嫌います。
    一方で、オンラインサロンにハマり、結果的には全財産を寄贈してオンラインサロンに入信してしまいます。(ここでいうオンライン・サロンはカルトといったほうが正しいかもですが)

    華美と直幸は考え方の相違からうまくいっていませんでしたが、いなくなってはじめて彼の存在の大きさに気づきます。そして彼を救うべく信者がともに住む地に向かうというストーリーです。

    華美はバランス感覚をなくしていない

    まるでお金の奴隷(守銭奴)のように描かれている華美ですが、事実を一つ一つ拾っていくと決して守銭奴ではないことがわかります。

    例えばサーフィンはお金がかかりますが、楽しい趣味として活動していますし、コスプレの趣味もあります。

    また、月に一度お金はかかっても両親と顔を合わせ母の愚痴を聞いています。

    直幸は華美の節約癖に対して「必要なことにお金をかけないのはもったいない」と言っていますが、華美は直幸に見えないところでお金をうまく使っているのです。

    全体的に暗い描写で進む本書ですが、サーフィンやコスプレといったお金のかかる趣味は開放的な描写で生き生きと描かれます。

    華美がただの守銭奴ではなく楽しむところは楽しんでいるところがわかり、人間味のある人物であることがわかります。

     

    お金があっても日常は変わらない??

    この物語では華美以上にお金のある人物として1億円以上の資産を保有する個人投資家の老男性3名が登場します。

    老男性はお金はあっても身だしなみに気を使わず、質素で貧乏な暮らしです。華美は生活保護受給者とあまり変わらないんじゃないかと評価しています。そして、その姿に将来の自分を思い浮かべます。

    自分が自分である限り、どうやったって、貧乏質素生活から抜け出すことはできないのではないか。金をいつどのように使うかという意志決定は、実のところ人生を何も変えやしないのかもしれない。……つまりは若いうちに大金を手にして、人生を謳歌しなければ何の意味もないということになるが、たとえ今大金を手に入れたとしても、華美は自分が豪遊などせず優良高配当銘柄の株を買っている姿しか思い描けなかった。

    このように、「結局お金を得ても人生何も変わらない」という現実を教えてくれます。

    ここが本書のメッセージの一つです。これは本当にその通りだと思います。

    しかしながら、勘違いしないで欲しいのは「それならお金など貯める必要はない」という結論ではないということです。

    たとえば華美はストーカーまがいの人物が現れた時、必要以上のタクシー代を払うことで危機を脱しています。また母のご機嫌を取るために20万円という大金を仕送りし、直幸を連れ戻すのに傭兵を雇い乗用車を手配しています。

    このようにお金は危険な場面、いざという場面では頼れるツールとして描かれます。

    この【お金は非常時に役に立つ】という描き方は現実的で説得力があると思いました。

    お金は非常時に役立つが【必ずしも役立つわけではない】

    先ほど述べた通り、本書では「お金は非常時に役に立つ」と描かれていますが、この思考をさらに一歩進めて考えると「非常時に役立つといっても必ずしも役立つわけではない」ということだと思います。

    というのも、世の中には不可逆なこともあり、その場合はいくらお金でも解決することは不可能だからです。

    本書では結局、直幸と華美は別れるという結論になりますが、まさにこれが象徴的です。人の心はお金では買えません。

    本書の例ではありませんが、たとえばがんになった有名人が(超高額で詐欺まがいの)代替医療に走ってしまうこともそのひとつでしょう。これもお金でなんとかしようという行動の一つですが、お金で健康を取り戻すことはほとんどできません。

    お金で解決できるものと解決できないものがある

    このこともあらためて認識させられました。

     

    おわりに

    以上、Phantomを読んだ感想でした。

    「お金を貯めても結局日常は変わらない」というのがリアルに感じられる作品でした。

    給料の大半を投資資金に使っている私にとっては非常に厳しい現実を突きつけられた感じです。そうなんですよね。「人生お金じゃない」のはその通りで、普段の人付き合いとか日常の会話とか、そういうお金に関係ない一つ一つが大事なんですよね。

    お金の現実を非常にリアル描いた作品です。お金に対する幻想(phantom)が崩れ去る作品とも言い換えられるでしょう。

    羽田圭介|Phantom

    今日は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

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