こんにちは。
映画ではないのですが、今日はレビューを語っていきたいと思います。
NHKのドキュメンタリーで衝撃的な作品を見ました。
「さようなら全てのエヴァンゲリオン〜庵野秀明の1214日間」
ちょっと前に再放送されていたものです。
録画していたのですが、今日ようやく見ることが出来まして、そして非常に示唆的な素晴らしい作品でした。
今日はこのドキュメンタリーを見て思ったことを語っていきたいと思います。
(以下、ネタバレを含みますのでご了承ください)
ファンが作るファンのための作品
まず注意書きとして、このドキュメンタリーはエヴァンゲリオンを知らない人にはまったく響かないと思います。笑
また、庵野秀明を知らない人がこのドキュメンタリーを見て
「エヴァンゲリオン、見たことないけどシン・エヴァ見に行こうかな」
とは多分ならないですw
このドキュメンタリーはエヴァンゲリオンや庵野秀明を知らない人をターゲットにした番組ではありません。
というのも
- 株式会社カラーってなに?
(カラーは庵野自身が設立した企業。アニメ版は庵野が所属していたガイナックスという別企業で作っていた) - スタジオジブリが出てくるけどどういう関係?
(以前庵野がジブリで働いていた。ナウシカも一部庵野の作画) - エヴァンゲリオンのアニメ版と新劇(映画版)ってどういう関係
(新劇はアニメ版のリビルド作品である)
これらに関して説明的なことは一切ありません。前提知識ありきで進むので背景知識がないと意味不明でしょう。
一方でファンならば上記のことはまあなんとなく知っているかと思います。(たとえ断片的でも)
そういうファンからしてみれば・・・・・それはそれはヨダレたらたらの情報が満載ですw
エヴァンゲリオンという作品を制作サイドから理解したい。違った角度から理解したい。
そういうファンのための素晴らしいドキュメンタリーなのです。
※余談ですが、ドキュメンタリー内に声優が普通に登場しているのも驚きました。
緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、三石琴乃、立木文彦
普通にここら辺のレジェンド声優が登場しますw
乗り越ることができない壁に食らいつく
さて、庵野秀明
他の出演者も語ってしますが、庵野秀明は碇シンジに近いところがあります。
エヴァを描くことは庵野秀明にとってエヴァに乗ることを意味します。
ファンの方ならご存知のようにアニメ版のラスト2話は衝撃的な展開で幕を閉じましたが、実はこの話と無関係ではありません。
アニメ版の終盤にもなると世間の盛り上がりとともにエヴァンゲリオンが創作者の意思を離れ一人歩きを始めます。
収拾がつかなくなり庵野自身も制御不能に。
そうして出来上がったのがおそらくアニメ版のラスト2話だと思われます。
しかし、今回の劇場版でそうならないように最新の注意を払いながら映画を制作しています。
ただ、それ自体が無理ゲーなのです。庵野自身も何度も挫折しています。それでも何度も起き上がり復活し作品を完成させる。
そういうドラマがこのドキュメンタリーに描かれています。
自分の理想を追い求めた先にあるもの
この作品を見ていて一番衝撃的に思ったところは庵野監督が「お客さんに伝わらないから作り直し」ということをしていた点です。
僕はてっきり庵野監督は自分の理想を追求する人だと思っていました。ところが、現実は違った。
「自分の精一杯を表現したけど伝わらなかったからやり直し」
この事実からわかったことは実は「自分の理想よりお客さんのことをファーストに考えている」ということです。
ただ、これは僕は罠だと思っています。
おそらく普通の人がお客さんファーストで作品を作ってもよい作品はできないでしょう。
庵野監督は原体験として自分の理想をとことん追求して、そしてうまく伝わらなかったという体験を持っているからです。
(アニメ版エヴァンゲリオンのラストで大きな批判を受けたことを指しています)
だから、自分の理想という限界を理解して、自分の理想を満たしつつお客さんに伝わる作品を作ろうと希求しているのです。
これはいろんな仕事に応用できるような気がします。
自分にとってこうなりたいという理想は多くの方がお持ちのことでしょう。
その理想に向かって努力する。理想に一歩でも近づく。
そこまでいったとき得られるものは他人からの賞賛でしょうか。絶対的な評価でしょうか。
いいえ。あくまで自分のなかでの納得感だけです。
だから理想を追求した後で第二幕が始まるのです。それが自分の理想を満たしつつ、他人が評価してくれる仕事。
この点が理解できたのが僕にとって大変収穫でした。
おわりに
このドキュメンタリーは仕事論であるとともに庵野秀明の半生に迫る人生論でもあります。
こういう生き方もあるのか・・・と非常に勉強になりました。
まだ見ていない方はAmazon primeのNHKオンデマンド会員になると見れるようです。
今日は以上です。