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映画レビュー

「パラサイト 半地下の家族」で見えた韓国社会の分断【ネタバレ有】

    こんにちは。

    先日この映画を観てきました。

     

    「パラサイト 半地下の家族」

     

    2019年パルムドール賞受賞の問題作です!

    これがまた面白くてハラハラする映画で、観終わったあとにHPが0になるような映画でした。

    まあ体力をもってかれます。笑

    「パラサイト 半地下の家族」は現代の韓国が舞台です。普通に見ても面白いですが、より重層的に理解するうえでは韓国の文化に対する理解が必要です。

    今日は「パラサイト」を通じて垣間見た韓国文化のジレンマに迫ってみたいと思います。

    以下ネタバレですので、まだ観ていない人はブラウザバック推奨です)

    用意はいいですか。ではガンガンネタバレしていきますよw

    早速行きましょう。

    「パラサイト 半地下の家族」から理解する韓国文化

    韓国(小中華文明)庶民は血縁主義社会

    主人公は半地下の家に暮らす貧乏一家4人(父母息子娘)です。

    一家は全員無職で内職生活をしているところから物語はスタートします。
    (韓国社会は日本以上に貧富の差が激しく就職難の社会なのでしょう)

    あるとき、ひょんなきっかけから息子は富豪家族の娘の家庭教師の職を得ます。そこから嘘や演技を駆使して、娘、父、母がうまいこと富豪一家に雇われて、富豪家族にパラサイトしていくというお話です。

    物語を読み解くキーワードは「血縁主義」です。

    日本(および西欧)ではもともと農耕共同体が社会を営んできました。ですから血縁関係を超えた社会集団でまとまってきた歴史があり、血縁関係がない人と信頼関係を結ぶことが容易です。(これは世界史的に見れば極めて異例なことらしいです)

    逆にいえば、日本では血縁関係には希薄で、たとえ兄弟であろうとお互い助け合って生きていくという感覚はほとんどありません。

     

    一方で韓国(小中華文化圏)では儒教の影響から家族に対する強い絆があります。
    そのため、血縁関係が重視され、家族は個人のアイデンディティの根幹を担っています。

    翻って言えば、血縁のない人と信頼関係を結ぶことは困難で、非血縁関係者に対しては軽薄な社会です

    稀に血縁のない人と信頼関係を結べたときは義兄弟として擬似的な血縁関係となることもありますが、義兄弟という言葉からも血縁関係がいかに重要かがわかるかと思います。

     

    エリートは血縁主義から役職主義に変わりつつある

    貧乏一家に相対する家族として富豪家族が登場します。

    富豪一家はインテリで特に父親がエリートです。
    そして、このエリート社会は儒教的な血縁主義社会とはまったく別の社会として描かれています。

    というのも資本主義の波に揉まれているからでしょうか、エリート社会は能力や役職を重視するものとして描かれています。

    ただし、韓国社会全体で見れば能力主義・役職主義はごくごく例外で、まだまだ血縁主義的な社会が一般的なようです。

    今回、貧乏一家の息子はインテリの友人から職を斡旋されます。なぜ友人にすぎない息子に仕事を紹介したかと言うと、それは友人がインテリ一家で血縁主義的な考えが希薄だからでしょう。

    しかし、息子は血縁主義社会に生きているので、家族以外の他人には軽薄です。
    ですから、この富豪一家を使って家族の就職斡旋をしてやろうと企むのです。

    この

    庶民(血縁主義)VSエリート(役職主義)

    という意識の違いが後々の大事件を巻き起こします。

     

    あの大事件の考察

    この映画のクライマックスは貧乏一家のお父さんが資産家のお父さんが刺してしまうところです。

    この点について貧乏一家のお父さんがなぜそこまで怒っていたのか、初見で見たとき若干不可解に思いました。

    しかし、だんだん謎が解けてきたので個人的見解を語っていきたいと思います。

    年長だが役職的には下の貧乏一家の父

    キーワードは年齢です。

    儒教文化の強い韓国では、初対面のときに真っ先に年齢を聞くほど年齢が重視され、年長者であれば「敬うべき人」として丁重にもてなされます。

    ここで考えて欲しいのは資産家の父と貧乏一家の父の年齢です。明らかに貧乏な父のほうが年上です。

    しかし、資産家の父に儒教的価値観は希薄です。自分より明らかに年上のタクシー運転手(貧乏父)に対しても、上から目線で発言したり、雇用主vs被雇用者という関係を維持しようとしています。

    自分は人を雇う側にいるという意識が見え隠れします。

    ところで、儒教には金持ちを敬えという思想はありません。
    ですから、貧乏父にとって、年長者を見下す年下のエリート父の言動は屈辱的です。

     

    そして、決定的なシーンが資産家父が貧乏父にインディアンの設定を伝えるシーンです。

    貧乏父が資産家の父からインディアン役を頼まれたとき、やや疲れた表情で、

    「あなたも大変ですね。奥さんを好きなのだから仕方ないですが(俺にこんなことをやらせんなよ)」

    と儒教的な(年長者としての)発言をしたところ、資産家父は表情が一変し

    「あなたには給料を払っています。これも就労の延長だとお考えください」

    とまったく可愛げのない役職主義的な発言で黙らせています。

    この発言は年下の者が年長者をバカにした屈辱的な発言でしょう。

     

    それがあの事件を巻き起こしたのだと思います。

    僕はこの事件は儒教と資本主義の狭間で揺れる韓国社会を象徴していると感じました。

     

    おわりに|日本人として韓国庶民の末恐ろしさを感じる

    以上、考察でした。

    映画のラストでは貧乏息子が事業で成功して、地下に閉じこもっている父に再開するシーンで終わります。

    貧乏一家にとってハッピーなエンディングで韓国庶民にとっては痛快なエンディングだと感じたことでしょう。

    しかしながら僕は日本人ですw

    血縁主義ではない日本に生きる僕からすると「血縁主義社会の怨念」のようなものを感じる非常に後味の悪いエンディングでした。

    血縁者とは強力な連帯意識を保つ一方で、血縁のない人間には容赦ない。

    そんな韓国庶民の怖さを感じずにはいられません。

    いずれにせよ、韓国人のアイデンティティを考える上でたいへん勉強になる作品です。
    *あくまで僕の独断と偏見の韓国論なので、的外れでしたらごめんなさい。

    今日は以上です。

    • 作品名:パラサイト 半地下の家族(韓国)
    • 上映時間:132分
    • おすすめ度:★★★★★
    • 一口メモ:初デートには向かない!コアな映画ファン向け。

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