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【書評】「楽天IR戦記」を読んで楽天に絶望した。

    最近この本を読みました。

    [wpap service="with" type="detail" id="4822289680" title="楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方"]

     

    楽天 IR 戦記〜「株を買ってもらえる会社」のつくり方

    楽天の元IR担当者が株を買ってもらうために投資家とどのような対話をしてきたかを綴った本です。

    僕は個人投資家で「楽天」株にはもともと興味があり、数年前から株を買おうか悩んでいました。。

    しかし、本書を読み終えた今、断言します。

    金輪際、楽天株に夢をもつことはありません。

    おそらく楽天株を長期で保有することはもうないでしょう。悲しい現実を知ってしまった気分です。

    ここからは本書を読んで感じた独断偏見による楽天への批判になります。

    楽天ユーザーや、楽天が好きな方、楽天関係者はここで戻るボタンをお願いします!

     

     

     

    はい。もう楽天愛に溢れた方はいないですよね。

    ではここからは好き勝手に語ります。笑

    *楽天のサービスに対する批判ではありません。あくまでも、イチ個人投資家としての楽天の財務活動に対する批判です。

    楽天の経営体質に対する批判|増資ありきで個人投資家軽視

    楽天のIR活動に対する批判の結論を言います。それは「楽天が公募増資に依存しがちで株主軽視であること」です。これについて説明していきます。

    証券会社は株主軽視の悪魔。個人投資家の敵でしかない

    楽天への批判云々以前にまず目の敵にすべきは証券会社です。

    本書では2013年に株価が1400円を超えたとき、引受証券会社から「株価が上昇してきたので公募増資を行いませんか」という打診があったと記述されています。

    この証券会社がどこかは分かりませんが、「株価が上昇したから公募増資をやりませんか」と提案する証券会社は投資家を食い物にしているのと同じで株主軽視甚だしいです。

    この時の提案について、楽天側は「資本構成上の必要性が感じられない」という理由で公募増資を見送りました。しかし、この時の提案が2015年の公募増資の背景にあると本書では示唆されています。

    2015年の公募増資は間違っていたのではないか。

    楽天は2015年に公募増資で1880億円の資金調達を行っています。

    この時の増資について僕は記憶に残っていて、投資家クラスタでは「Kobo増資」などと言われ揶揄されていました。

    この増資に関して、当時の僕は「楽天側に明確な増資理由がない」ように感じていましたし、切迫した必要性がないのになぜ増資をするのだろうと疑問を感じていました。

    この疑問について、本書では

    米国では一般事業目的という目的で増資が行える一方で、日本ではそれができない。そのために少々曖昧な理由になった

    という内容の記述がありました。

    一般事業目的とは、つまり明確な事業拡大の目的がなくとも増資を行えるということみたいです。

    一般事業目的での投資の是非はここでは置いておくとして、ここで問題にしたいのは公募増資と株価の関係です。

    当時楽天株は絶好調でした。楽天はその好機を逃さずに公募増資を行ったわけです。

    また、楽天は2006年にも増資をしています。
    前回の増資から9年しか経っておらず、2013年までは増資前の水準で株価が低迷していました。

    株価が好調になるとすぐ公募増資してしまうあたり、

    「楽天は自社株の価値に自信がないのでは」

    という印象を受けます。

    ちなみに公募増資から4年経った2020年現在の株価は当時の公募増資価格の約半分です。

    結果論ですが、2015年の公募増資は個人投資家にとって悲劇以外の何者でもありませんでした。

     

    株価が好調になればまた増資するだろう

    2015年の公募増資の調達額を決定するにあたり、「あんまり欲張りにならない方がいい」と三木谷社長が発言されたことから調達金額を少なくした、と記述されています。

    「やろうと思えば4000億円くらい増資できたのに」

    本書からはそんなような尊大な感情が見え隠れしていました。
    当然、株式の希薄化について、十分な議論があったようには思えません。

    また、三木谷社長の「欲張りにならないほうがいい」という発言も眉唾ものです。深読みしすぎかもしれませんが、次回の増資を見越している発言に聞こえます。

    本書を一通り読んでいると、楽天のIR活動では常に株価を睨み公募増資を念頭に置いていることがわかります。

    公募増資を常に検討している企業の姿勢には、個人投資家としてがっかりしました。

    (余談ですが、最近、楽天が携帯基地局の増設にあたって増資ではなく社債で資金調達をしています。初期コストのかかる基地局増設こそ増資で資金調達すべきだと思いますが、これは昨今の株価低迷を鑑みてのことでしょう。2015年の増資が余計だった印象です)

    楽天が最大2000億円の劣後債、携帯参入で資金調達

     

    監査役にSO付与した件|楽天側の説明には無理がある

    もうひとつの疑問点として、楽天が監査役にストックオプション(SO)を発行したことが挙げられます

    楽天は2012年の3月にストックオプションの議案を提出し、賛成率ギリギリで承認されました。

    賛成率が低くなった理由として、一つ目に行使価格が1円で違和感のある価格だったことが本書で挙げられています。これに関して著者は「特定譲渡制限付株式と同様の効果を得たいがためにこのような設計を行った」という説明をしていて、この説明は合理性があるように僕には感じました。

    問題は次です。

    賛成率が低くなったもう一つの理由として、SOが社外取締役と監査役にも付与されるという内容だったことが挙げられています。

    本書で、著者は「社外取締役も監査役も経営者という側面を持っているのでSO付与は合理的である」と説明しています。僕はこの説明に納得がいきませんでした。

    確かに、社外取締役には経営者という側面があるので、社外取締役にストックオプションを与えることに関しては一定の合理性があるようにも思えます。

    しかし、問題は「監査役にストックオプションを与える」ことです。

    楽天としては、「監査役は株主価値の毀損を防止することが責務だから株主株式報酬を付与する意味がある」と主張しています。

    しかし、この説明には監査役の任期が超長期であることが前提です。

    監査役が不正を発見して指摘をすれば一時的に株価は下がるのは明白です。不正の責任は監査役ではなく経営者にあるにもかかわらずです。

    監査役にSOを付与すると、監査役も共同責任を負う構造になります。これでは監査役の健全な活動は難しいでしょう。

    また不正を告発した監査役は会社に居座りにくくなるはずです。そうであれば長期的な任期というのも非現実的です。

    本書では、機関投資家の反対意見として「監査役は本来中立的な立場で監査を行う者。だから監査役へはSO付与ではなく、固定報酬制度が妥当である」と説明がされています。

    機関投資家のほうが筋が通った意見だと僕は思いました。

     

    おわりに|個人投資家に誠実な企業になってください。

    以上、長々と楽天の財務活動について批判してきました。

    資金調達をするにあたって、株式増資が経営上一番都合がいいことは百も承知です。返済する必要もなければ利子を払う必要もありません。

    だからこそ、公募増資という判断にはきわめて慎重であってほしいし、公募増資をしたからには「元々の株価を短期的にも長期的にも絶対に超えてみせる」という責務を感じて欲しいと思います。

    それが日本の株式市場の信頼に繋がっていきますし、金融庁が勧める個人投資家の育成にもつながっていくはずです。

     

    [wpap service="with" type="detail" id="4822289680" title="楽天IR戦記 「株を買ってもらえる会社」のつくり方"]

    最後になりますが、本書を出版してくれた著者および出版社には敬意を示したいと思います。

    お目汚し失礼しました。今日は以上です。

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