先日Amazon primeでこの映画を観ました。
犯罪をした人の立ち直りを支える保護司という職業にスポットライトを当てた映画です。
リアリティがあって面白かった一方で、あと一歩だなと思う点もありました。
今日は「前科者」について語っていきたいと思います。
(盛大なネタバレがありますので、ネタバレされたくない方はブラウザバック推奨です)
「前科者」のあらすじ
あらすじ
罪を犯した者、非行のある者の更生に寄り添う国家公務員、保護司。 保護司を始めて 3 年の阿川佳代(有村架純)は仕事にやりがいを感じ、様々な「前科者」のために奔走していた。 そんな中、佳代が担当している物静かな工藤誠(森田剛)は更生を絵に描いたような人物で、佳代は誠が社会人として自立する日は近いと楽しみにしていた。しかし、誠は忽然と姿を消し、再び警察に追われる身に。一方その頃、連続殺人事件が発生。捜査が進むにつれ佳代の壮絶な過去や、若くして保護司という仕事を選んだ理由も次第に明らかになっていき――。
「前科者」は犯罪や非行をした人の立ち直りを支える保護司という職業にスポットライトを当てたドラマです。
主人公は有村架純が演じる阿川です。コンビニバイトと保護司を掛け持ちしながら働いています。
中学生の時に事件に巻き込まれた複雑な過去があるものの、真面目な仕事ぶりでまっすぐな保護司を演じています。
弱さこそが魅力になる
弱さこそが魅力になる
保護司は社会復帰を地域的な側面から手伝うお仕事です。そのため、仕事柄多くの元受刑者と繋がりができます。
本作品でも犯罪を犯しながらも阿川の手で社会復帰を果たした人物がたくさん登場します。
それぞれの元受刑者は個性的ですが普通の人に比べて少し欠けた一面も持ち合わせています。
しかし、そういった弱点(弱み)は深くかかわっていくと人間的な魅力になるものとして描かれています。
たとえば元受刑者のギャル(石橋)は阿川の家に無断で入り込み、阿川の家で鍋パを開催する身勝手な一面がありますが、阿川の相談に乗って阿川を励ましたりと面倒見のいい一面ももっています。
サラリーマンとして働いていて思うのですが、サラリーマンは全てをそつなくこなすことが求められ欠点に注目される減点主義の社会です。
一方で、「欠点は翻ってその人の魅力になる」というのは本当にそのとおりで、この映画では欠点を魅力として描いています。
こういった柔軟な考え方は現代社会に欠けているところだよな〜と感じました。
もちつもたれつの保護司と元受刑者
保護司は人の更生を「支援」する仕事です。
当然、保護司は元受刑者を「助ける」のですが、その一方で元受刑者とのかかわりを通じて「助けられている」という側面もあります。
もちろん、これは人によると思いますが、
保護司と元受刑者が一方的な関係ではなく相互的な関係であるのです。
いろいろな人の人生に深くかかわって、受刑者と保護司がお互いに成長していく様子が素敵だなと思いました。
更生の難しさ
本作ではかつて殺人を犯して服役した経験をもつ工藤という男に焦点が当てられます。
彼は口下手ですが真面目な性格で社会復帰後に自動車整備の職を得て順調に更生の道を歩み始めます。
しかしながら連続殺人犯の弟と偶然再会することで状況は一変。
弟に誘われる形で再び非行の道に走っていくのでした。
復帰後に再度犯罪の道に走ってしまうというのはあるあるなのでしょう。
映画を観なくてもなんとなく想像がつきますし、一度そういう環境に陥ってしまうと逃れづらい面もあるのかなと思います。
とはいえ弟が「連続殺人犯」というのはなかなか設定が強引だなと思いました。
百歩譲って設定はいいとしても、工藤は一度「ダメ」と言っただけで、その後すぐに協力し以降は盲目的に弟に協力しています。
この点は正直あまり感情移入できませんでした。
犯罪に再び加担していく心情の変化や葛藤をもう少し描いてほしかったと個人的には思ってしまいました。
保護司という職業の困難さ
この映画を観て僕が思ったこと。
それは
「保護司」は現代人の価値観にそぐわない職業だということです。
まず現代人の僕にとって最も抵抗があったのは保護司が元受刑者と「保護司の自宅」で対面しているという点です。
仲のいい友人などならともかく、元受刑者を自宅に招いて毎月面談をするなんて絶対に嫌ですw
元受刑者を悪く言いたいわけではないのですが不安定な人間であることは確かですし、初対面であれば赤の他人です。
そんな人と自宅で1対1の面談はちょっとありえないと思いました。
また、保護司が報酬が一切でない完全ボランティアの仕事というのも衝撃でした。
元受刑者を定期的にモニタリングするという大変な仕事です。はたして無給で誰がやるのでしょうか。
そして、それでいい人が集まるのでしょうか。僕には甚だ疑問です。
さらに言えば保護司はボランティアなので普通の人であれば本業の仕事を別で行う必要があります。
また、保護司は元受刑者という不安定な人を監督するのが仕事なので、本業に迷惑がかかることもしばしばです。
本作品でも保護司の阿川に振り回されっぱなしのコンビニ店長が描かれていました。
これ、客観的に見たら、阿川はクビを言い渡されても文句言えないレベルですw
幸い店長は阿川の仕事に理解があるので嫌々ながらも受け入れていますが、周囲の理解が得られないとできない仕事だなとつくづく感じさせられました。
おわりに
以上、「前科者」の解説でした。
たった2時間少々ですが、保護司という仕事の光と闇をうまく描いたいい作品だと思います。
今日は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。